Blog 真っ青な空

企業を定年退職したエンジニア、科学技術コンサルタントやってます。

環境規制動向(5)

今までEUでの環境規制を調べました。化学物質の使用規制や自動車排ガス規制などについてです。

 

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今回は、アメリカの状況についてです。

まず、化学物質の使用規制。

アメリカでの電気・電子機器の有害物質規制は、連邦レベルでの法律はなく、州レベルで進められています。カリフォルニア州で「2003年電子機器廃棄物リサイクル法(Electronic Waste Recycling Act of 2003=EWRA)」が制定され、重金属類の規制がCalifornia版RoHSとして2007年1月1日から施行されています。

適用は「4インチ以上のスクリーンを含んだビデオディスプレイ機器」のみであり、鉛、水銀、カドミウム六価クロムの4種の重金属の使用が制限されています。最大許容濃度はEU RoHS指令と同じくカドミウム0.01wt%、そのほかは0.1wt%です。


そのほかに2008年にカリフォルニア州で制定された「グリーンケミストリー法」があります。これは化学物質ごとに法律を定める代わりに、1) 製品中の懸念化学物質を特定し、2) 代替策評価によって別の有害物質による「残念な代替」を防ぎ、かつ3) 必要に応じて規制対策を講じて消費者向け製品の安全性を確実に高める、という新たな規制アプローチを示したものです。これはカリフォルニア以外のいくつかの州でも施行されているようです。

 

また、同じカリフォルニアですが、州法プロポジション65というものがあり、その内容は飲料水の安全性確保と消費者に対する有害物質(発がん性、先天性異常の原因物質及びその他の生殖毒性)の暴露から市民を守ることを目的としています。プロポジション65(以下「CA Prop 65」といいます)の適用を受けるのはカリフォルニア州で事業を行っている人及び企業にあって、特定の化学物質を含む製品を有する場合には「CA Prop 65」の要件が課されます。リストで指定された化学物質を含有する製品がカリフォルニア州内で販売または配布される場合は、全ての曝露リスクおよび/または表示に対する要求事項を満たさなければなりません。2018年10月26日時点で、リストには約900種類の化学物質が登録されており、「CA Prop 65」はリストに記載された全ての有害物質を含む製品の販売を禁止するものではないのですが、リストに記載されている化学物質が「リスクがある」と認定された量で含有する場合は製品に必要事項を記載したラベルを貼付することが必要です。そして、人が検出可能な量の化学物質によって曝露される前に「明確かつ合理的な警告」を出すことを要求しています。2018年8月30日より「CA Prop 65」で定める警告文の内容変更が行われました。「消費者製品に関する新しい警告では、製品が化学物質を『含有している』というより、『CA Prop65』の化学物質に『暴露される可能性がある』」となります。

 

 

また、アメリカには有害物質規制法(TSCA)があり、人の健康又は環境を損なう不当なリスクをもたらす化学物質及び混合物を規制することを目的として、1977年1月1日に発効しました(連邦全体に対して)。

・原則禁止物質:PCB類、アスベスト6価クロム他3物質
・使用管理物質:鉛、ホルムアルデヒド
・SNUR(重要新規利用規則)(製造・輸入の制限、用途制限、禁止物質により規制内容は異なる):約1,800物質群

 

アメリカの場合、EUとかと違って、全米での規制というよりも州ごとに規制が行われているのでわかりにくいのですが、決して緩いわけではなく、CA Prop 65などでわかるように場所によっては、企業に厳しい内容を要求しているようです。

それと、この人がこれから大統領になるので、環境規制は、さらにより厳しくなると思われます。

バイデン政権なら激変のエネルギー・環境政策 | アメリカ大統領選2020 ...

 

環境規制動向(5)(終わり)

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環境規制動向(4)

環境規制について調べています。

前回までは、EUの化学物質の規制について調べました。

 

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今回は、以前から気になっていたEUの大気汚染、排ガス規制について調べてみます。主にエンジン排ガスについての規制です。

 

 

 

マスコミの論調に惑わされるな。独カルテル問題を冷静に読め(carview ...

EU欧州連合)における段階的な自動車排出ガス規制。欧州における排出ガス規制は1970年に乗用車および軽トラックから始まり、1988年には総重量3.5t以上の重量トラックに対する規制が実施された。その後、Euro1(1992年~)、Euro2(1996年~)、Euro3(2000年~)、Euro4(2005年~)と逐次実施され、2009年からはEuro5が、さらに2014年からはEuro6が導入されている。Euro3ではOBD(車載故障診断装置)の装備が義務付けられ、Euro4では乗用車の排出基準がNOx(窒素酸化物):0.25g/km、PM(粒子状物質):0.025g/km、大型ディーゼル・トラックではNOx:3.5g/kWh、PM:0.02g/kWhとなった。Euro5では、乗用車の排出基準がNOx:0.18g/km、PM:0.005g/km、さらに地球温暖化防止のためのCO2排出量規制(140g/km以下)が新たに追加された。Euro6では、NOxの排出基準を0.08g/km(日本のポスト新長期排出ガス規制と同じ)とし、PMに関してはEuro5と同じ。

 

さらにEUは21年から「CAFE規制」と呼ばれる自動車向けの排ガス規制を本格施行します。域内で販売した全ての車を対象に、メーカーごとに走行1キロメートルあたりのCO2排出量を15年の目標値に比べて約3割少ない95g/km以下に減らすことを義務付けます。基準を上回った場合、1台1グラム当たり95ユーロ(約1万2千円)の罰金が各社に科されることになります。

 

また、EUの次期排出ガス規制ですが、新しくアンモニア(NH3)を対象に加えるようです(EURO7)。2020年内に決まる見込みで、23〜24年に開始予定。これまで規制対象だった窒素酸化物(NOx)や炭化水素類(HC)、一酸化炭素(CO)と異なり、よく使われる三元触媒で浄化できないそうです。NH3はガソリンエンジンの混合気で燃料が濃い状態で燃えたとき(リッチ運転時)に発生しやすい。現行エンジンの大半は燃料と空気の比率を理論空燃比(14.7)として運転するが、実態は気筒内に濃淡がある。濃いところでNH3が発生しがち。希薄燃焼へのシフトが進みそう。

 

一方、四輪車だけでなく二輪車にも厳しい排ガス規制が課せられてきました。

ユーロ6規制の大波に備え、強制進化で二輪車の未来を切り開け【バイク新車近未来予想】 | WEBヤングマシン|最新バイク情報 (young-machine.com)

 

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EURO5が今年、そしてさらに厳しいEURO6が2024年ころに予定されているようです。

 

自動車(四輪車)ではすでに、有害な化学物質(NOxなど)の排出抑制という目的から、地球温暖化ガスの低減に変わっていて、実質CAFE規制によってCO2排出量を規制される段階にきています。

そして、さらにEURO7におけるアンモニアの規制。
ぞうきんをきつく絞るような規制です。

 

一方、二輪車は、排ガス規制の最終段階であろうEURO6規制に向かおうとしているところです(おそらくその規制は最も厳しく、PM量を厳密に規定するものになるかと)。

 

EUでの自動車排ガス規制、今まで以上に、加速度的に厳しくなっている、という印象です。それは、企業努力を要請するという生易しいものではなく、法律として厳に遵守せよということなので、やるしかないものです。

 

環境規制動向(4)(終わり)

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産学官プロジェクト研究

産学官の共同研究、

企業と大学、それと国(または県とか)の3者が関わる共同研究のことについてです。

 産学官連携|HELLO INNOVATION

 

以前、自分が経験したプロジェクトにJSTの委託開発というものがあります。
これは、まさに産学官の共同研究です。

 

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自分が所属する企業、それと一緒に研究をやってきた大学、その成果を元にJST科学技術振興機構)の委託開発に応募して、無事採択。

 

それで、この3者のプロジェクト(4年間)が始まりました。
プロジェクトの主体は会社です。当時の責任者は自分。

 

産業界(企業)、学校(大学)、官公庁(JST)の3者でやるメリットは結局、何だったかのか、デメリットは何だったのか、ということですが、

結局、メリットは、コトを進める、前進させることができる、ということに尽きるかと。プロジェクトの開始時点でスケジュールやマイルストーンが決められているので、それに対しての進捗度を明らかにしなければなりません。当たり前の話なのですが、
社内外に説明するというのは、意外と大変です。でも、これをやってゆくことで着実に研究成果は出てくるようです。

 

一方、デメリットですが、簡単にやめられない、方向修正が難しい、また、顧客に対する説明で苦労する、といったところでしょうか。あと、3者ですので、ロイヤリティーの問題がよりややこしくなりますね。また、ときどき二枚舌を使うこともある、ということ。出来した問題の表現の仕方、あるいは企業秘密に関わるので、ほかの2者にはどうしても言えないとか。その兼ね合いをどうするのか、3者となるとそのあたりが複雑になりますね。

 

特に、顧客に関して言えば、国プロだろうが、なんだろうが関係なくて、安くていいものが欲しいだけ。なので、国プロの製品というと腰が引けることもあります。それは必ずロイヤリティーが含まれるので価格が高めに設定されるのでは、という危惧があるからです。そこもうまくやる必要が出てきます。

 

結局、最初の立ち上がりの段階で組織編制がうまくできれば、あとは開発で突っ走るだけ、そして終了時の製品化のときの契約。

 

トータルでは、国プロは企業から見ても利用価値はあるかと思います。
実際の担当者は気苦労が絶えず、なかなか大変なのですが。

 

産学官プロジェクト研究(終わり)

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環境規制動向(3)

環境規制について調べています。

主にEUで電子機器に適用されるROHS指令について記しました。
 

 

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で、同じEU域で出されているREACH規制についても整理して記したいと思います。

 

REACH( Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of CHemicals 「化学物質の登録、評価、認可、及び、制限」)は、EU(欧州連合)が制定した人の健康や環境の保護のために化学物質を管理する欧州議会及び欧州理事会規則。また、EU市場内での物質の自由な流通により、競争力と技術革新を強化することも目的にしている。2007年6月1日施行。

ROHS指令は電機電子機器に含まれる10物質を規定以上の濃度で含有することを禁止ているのに対し、REACH規制では含有物質の総量を管理すること、そしてその結果の届出を要求しています。禁止じゃないからまだましか、とも思えるのですが「使用量が多く有害性が懸念される化学物質、SVHC:Substances of Very High Concerns」は、現在、209物質であり(2020.6現在)、今後さらに拡大が予想されています(候補物質はなんと約1500物質)。

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 また、その対象は、既存・新規を問わずEU域内で1トン/年以上の化学品を販売するには、一部例外を除き、欧州化学品庁(ECHA)への「登録」が必要、ということですから電子機器だけでなく自動車などすべてが対象ということになります。

 

ちなみに最近追加されたSVHCは以下となります。

 

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ほぼ、溶剤用途で使われているものがターゲットとされています。
メタノール、シロキサン、ピロリドン・・・

 

ピロリドン、電池製造の現場で溶剤としてよく使われているもの。製品混入が許されなくなってますね。

 

また、最後のジイソシアネートはウレタン樹脂の原料ですね(このイソシアネートとジオールを反応させるとウレタン樹脂ができます)。未反応の原料はある程度、残ると思うのですがその残存量を測定しなければならない。

 

このREACH規則、企業にその実績を報告させながら、今後、禁止すべき規制物資を決めてゆく流れだと思います。将来的には、使える化学物質がより限られてくることになります。

これからの商品開発、針の孔を通すような規制回避が求められてくるように思えます。
そしてアメリカで民主党政権が発足して、その動きは加速すると考えられます。

 

環境規制動向(3)(終わり)

 

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環境規制動向(2)

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環境規制動向を調べています。

 

その環境規制の一つにRoHS指令:Restriction of Hazardous Substances Directive(危険物質に関する制限令)があります。電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令です。RoHS指令は2003年2月に最初の指令(通称:RoHS1)が制定され、2006年7月に施行されました。その後2011年7月に改正指令(通称:RoHS2)を公布。RoHS1では有害物質として6物質が指定されていましたが、RoHS2では4物質が追加され、合計10物質が規制対象になりました。そして2019年7月22日から使用制限がはじまりました。

 

禁止物質と対象製品カテゴリーです。現時点で、あらゆる電気・電子機器がその対象となっています。

鉛、水銀、六価クロムカドミウムは人体に毒性がある金属もしくは金属化合物です。
ですので、それらが規制されるのは当然のことかと。また、PBBやPBDEは、臭素を含み、プラスチック(躯体など)に難燃性を付与できることから使われてきたのですが、人体影響(毒性)があることから禁止されました。

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 一方、最近、追加された4種類。

 

・DEHP:フタル酸ジニエチルへキシル
・BBP   :フタル酸ブチルベンジル
・DBP  :フタル酸ジブチ
・DIBP :フタル酸ジイソブチル

 

これらは、金属を含まず、また臭素などのハロゲンも含まれていません。どんな毒性なのでしょうか? これらは、人間の内分泌系をかく乱し、健康に影響を与えるのだそうです(環境ホルモン物質)。もう、フタル酸エステル類は使えそうもありません。実際、代替剤として非フタル酸系が使われているそうです。これらは従来、プラスチックの可塑剤(プラスチックを柔らかくする添加剤)として使われてきました。大学の教科書にもその用途が記されています。長年にわたって使われてきたのですが、ついに規制されてしまいました。

 

また、ROHs指令の今後ですが、以下の物質が順番に規制されてゆく予想だそうです。

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フタル酸はもうダメで、そのあと、アンチモン類。
また、気になるのがポリ塩化ビニルです。俗にいう塩ビです。
その用途は、衣類、壁紙、バッグ、インテリアなど多岐にわたります。なのでその影響はとてつもなく大きいものになると思います。

 

環境規制動向(2)(終わり)

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環境規制動向(1)

地球環境についてのやかましさ、年を追うごとに激しくなっています。
地球温暖化二酸化炭素削減のかけ声は途絶えることがありません。

 

そのほかにも、以前から、環境規制が行われてきました。ここで環境問題の全体をまず振り返ってみます。

図は、右に行けば行くほど、より私たちにとって身近な地域での話ということです。

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大気や水質の汚染、汚濁。さらにその地域で排出される物質、ガス。それが回りまわって国家レベルや地球全体へ影響を及ぼす、という構図です。一番、左にある地球温暖化については何度か言及してきました。

 

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これは今、一番ホットな話題になっているからです。しかし、地球温暖化二酸化炭素削減以外の環境規制についても以前から様々なことが行われてきました。

排気ガス規制や、化学物質規制などです。図で書かれている、右側の次元の話です。

ここについて、その現状を調べてみることにします。

 

環境規制動向(1)(終わり)

 

 

新規事業を振り返る(4)

新規事業の立ち上げ。

10年前の話をずっとしています。

 

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今回は、会社の中で、新しいことをやる際の、『モチベーション』についてです。

新規事業や新技術に携わる人。そのモチベーションは結局何なのか、ということについて考えてみます。

 

理系であれば、会社に入る前に学校で勉強していて、なぜそれを勉強したのかと言えば、単純に面白そう、と思ったり、やってみたら意外とできたからとか、そんな理由だったかと思います。それで、理系の勉強を終わって、会社に入ったのだけれど、面白くもない仕事をやらされて、でも、やらされているうちにそこそこできるようになって、みたいな。

 

そんな人の『新規事業』に対するモチベーション。

たぶん、こんな感じかな。

①今の仕事に飽きた、新しいことをしてみたい

②仕事で自分が好きなことをしたい

③新規事業の知識を身に着け、偉そうにしたい

④今の仕事では出世できそうもない。新規事業ならできるかも

 

①や②は、単純な話で、隣の芝生は青い、ということ。実際、新しいことをやってみると今までと大差なく、地味なもんです。

③はモチベーションとしてはありかも、と思います。周りに人は知らないことを、新事業ではやるので、確かに最初は偉そうにできますね。発言もちゃんと聞いてくれます。でも、その知識が世間並み、もしくはそれ以上でなければダメです。長続きしません。メッキは簡単に剥げるのです。

④は、サラリーマンとしては、ぜんぜんありかと思います。しかし、新規事業立ち上げをするために出世欲だけでやれるかどうか。これはやった後で、成果としてくっついてくる、それだけのように思えます。

 

で、結局、モチベーションは何なのか。

『世のため、人のため』の仕事だ、と思い込むこと。

それがモチベーション。

これが、どの場面でも、自分に言い聞かせられる言葉だと思います。

 

 

新規事業を振り返る(4)(終わり)