カーボンリサイクルについて、その動きを書いてきました。
その全体像は以下です。
簡単に言ってしまうと、大気に排出される二酸化炭素(CO2)をすべて回収し、再生可能エネルギー(太陽光発電)で作られた水素と反応させて、私たちが日常使う燃料やプラスチック製品などを製造しよう、というものです。
要するに、炭素が、プラスチックになったり、二酸化炭素になったりして、地球上をぐるぐる回るということです、これだと、石油を掘り出して、二酸化炭素を排出しつづけてきた従来とは異なって、地球上に存在するトータル炭素量が変わりません。むしろ、二酸化炭素を固定化することで大気中の二酸化炭素を減らすことができるわけです。
したがって、地球温暖化を抑制できる、という話につながります。
話としては納得です。
しかし、このサイクルには前提があります。
それは、
クリーンな水素(CO2を排出させることなく作られた水素)を安く作ることができること。また、純度の高いCO2を効率よく取り出せること、さらにこの水素とCO2を反応させて、現在使用されている莫大な量の化学品や燃料を適正な価格で供給できること、です。
これは、再生可能エネルギーの行方にも関わるし、クルマの燃料にも関係してきます。今、地球上で行われているほとんどの経済活動に大きな影響を与えるものです。
政府のロードマップでは、2050年には、これらが普及し始めるとしています。
あと、30年です。
もう、脱炭素は地球温暖化抑制のためには、やらなければならないこと、というコンセンサスができてしまっています。
だから、カーボンリサイクルはやらなければならないし、やってゆくでしょうけど、あと30年でできるかどうか。
PLA樹脂(ポリ乳酸)というプラスチック材料があります。これは約20年前に開発された植物由来のプラスチック素材です。石油由来に変わる素材として作られたのがPLA樹脂です。でも、現在その生産量は世界中で15万トン/年程度。プラスチックすべての生産量が3億8千万トン/年(2015年)ということですから、全体のうち、わずか0.04%。二酸化炭素削減の効果はほとんどなし、だと思います。
政府が掲げるロードマップにもコストのことが書かれていますが、それがすべてかと思います。二酸化炭素と水素から、どれだけ安く石油化学製品を作れるのか、それでカーボンリサイクルができるかどうかは決まる。
そう思います。
カーボンリサイクル(9)(終わり)