以前、「アンモニア」という物質の将来に向けた意義を書きました。
それで、脱炭素社会に向けた『アンモニア』の意義は2つ。
1 新燃料としての利用 ~船舶、発電所への適用~
2 水素キャリア(エネルギー媒体)としての利用 ~燃料電池向け燃料~
今回は、もう少し、掘り下げて、アンモニア利用研究の現状や課題を整理してみます。
最近のニュース記事から、
東工大で新しいアンモニア合成触媒が開発されました。
・単独では活性を示さないニッケル(Ni)と窒化ランタン(LaN)を用いた高効率アンモニア合成に成功
・ルテニウムなどの貴金属を使わずに高いアンモニア合成活性を実現
・LaN表面の窒素空孔を反応場として利用する新コンセプトを実証
これまでのアンモニア合成触媒は、高温・高圧下での合成には鉄が使われてきました。そしてアンモニア合成は、空気中の窒素と水素を鉄系触媒で反応させるハーバー・ボッシュ法(HB法)を使って行われています。HB法は1913年にドイツで工業的製造プロセスとして採用されて以来100年以上経った現在でもアンモニア合成の主流だそうです。実際のプラントでは水素と窒素を鉄触媒存在下 25 - 35 MPa、約500℃ で反応させると、
の反応によってアンモニアが生成する。商業的に成り立たせるためには巨大な設備が必要。もっと簡便に作ろう(より低圧・低温)とすると、鉄よりも高価なルテニウムを使う必要があるそうです(ルテニウムはgあたり1000円前後)。
今回の研究では、より安価なニッケル(gあたり1-2円)で、ルテニウム以上の性能を示したということなので、より低圧・低温での反応が可能で、それほど大きな設備を必要とせず、簡便にアンモニアを合成できる、ということになります。
大規模プラントでなくても可能ということになれば、将来の水素社会を考えた場合、水素を一旦、アンモニアに変換して蓄え、必要なときに使う、というシステムが現実味を帯びてきます。しかし、前回、書いたようにアンモニアには毒性があるので、民生用には向かず、限定された範囲(公共設備など)での使用になるものと思われます。
アンモニアの意義(2)(終わり)