Blog 真っ青な空

企業を定年退職したエンジニア、科学技術コンサルタントやってます。

カーボンリサイクル(4)

カーボンリサイクル技術の中身について一つずつ調べてみました。

 

前回は全体像を示し、大きく4つの領域があるということでした(日本政府が示している技術領域)。

①化学品;ウレタンやプラスチックの一種でCDなどにも使われるポリカーボネートといった「含酸素化合物(酸素原子を含む化合物)」への利用
②燃料;光合成をおこなう小さな生き物「微細藻類」を使ったバイオ燃料や、CO2由来やバイオマス由来のバイオ燃料。ほかにガス燃料も。
③鉱物;「コンクリート製品」や「コンクリート構造物」への利用。具体的にはコンクリート製品などを製造する際に、その内部にCO₂を吸収させるもの。
④その他;バイオマス燃料とCCSを組み合わせる「BECCS」や海の海藻や海草がCO₂を取り入れることで海域にCO₂が貯留する「ブルーカーボン」など。

 

 

 

今回は、そのうち、②の燃料について見てみます。

 

カーボンリサイクル技術ロードマップ(日本政府)から燃料の部分を抜粋します。

一番最初に出てくるのは、微細藻を使ったバイオジェット燃料やバイオディーゼル燃料の製造です。

 

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要するに、藻をつかって光合成させて、効率よくバイオマス資源を生産しようということです。ほかのバイオマスと比較して藻には以下の利点があるとのことです。

二酸化炭素(CO2)を効率的に固定できる
②水資源を有効活用できる
  農業よりずっと少ない水資源で培養できる。
③どんな土地でも利用できる
  水と光さえあればどこでも培養することができる。
④生産性が極めて高い
  人が活用できる部分が多く、植物と比べて生産性が大幅に高い。

 

 

微細藻は、バイオマス資源としてとても有用ということで積極的に研究を進めていこう、ということなのですが、その用途が、まずはバイオジェット燃料でやろう、というところに違和感を感じます。

 

なぜ自動車燃料ではないのでしょうか?

 

その答えはこの記事のなかにありました。

pps-net.org

 

記事を引用します・・・・

バイオ燃料の導入が遅れている日本
バイオ燃料は、既存の化石燃料と比べると理論上CO2排出量が少ない再生可能な液体燃料であり、欧米を中心に世界中で普及が進んでいます。国際的な枠組みの中でも徐々に存在感を増しており、例えば2016年の国際民間航空機関(ICAO)総会において、温室効果ガス排出削減制度(GMBM)を導入することで合意が行われました。これにより、各航空会社は2021年以降、2020年実績を上回るCO2排出量を排出権として購入する必要が発生します。つまり、各航空会社は、2020年実績を上回る量に関して排出権を購入しなければならなくなり、その対策として有望視されているバイオジェット燃料の導入は、米国、EU主要国、カナダやオーストラリアのほか、シンガポール、タイ、中国やインドといったアジアの国々でも進んでいます。

ICAOには日本も加盟しておりますが、バイオジェット燃料を使用した有償飛行はいまだ実現しておらず、世界主要国に対してバイオジェット燃料の導入が遅れているのが現状です。

ただし日本も着実に歩を進めており、バイオベンチャーユーグレナ社が日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを、2018年10月31日に竣工し注目を集めました。

燃料を多く使うカテゴリとしては、航空の他に自動車がありますが、この自動車用バイオ燃料について、EU各国では2020年までに10%(再生可能エネルギー指令(RED))、米国では2020年までに20%(再生可能燃料使用基準(RFS2))とすることが目標として掲げられています。

しかしながら、資源エネルギー庁の資料によると、日本ではガソリンとディーゼル代替のバイオ燃料の導入目標は2022年までで年間数%程度であり、欧米と比較すると低い目標水準に留まっています。

こうした中、ユーグレナと、自動車部品サプライヤー最大手のデンソーは、双方の微細藻類に関する知見を持ち寄り、さまざまな事業の実用化に向けた包括的な提携をすることで基本合意したと発表しました。・・・・引用、ここまで。

 

要するに国際民間航空機関(ICAO)総会で、温室効果ガス排出削減制度(GMBM)を導入することで合意してしまったからですね。ただ、その一方で、日本の民間企業の自動車部品メーカーであるデンソーは微細藻の自動車産業への可能性を感じ、いち早く動いた、ということだと思います。

 

日本政府が掲げるロードマップに対する違和感は、そのまま日本の国際競争力のなさを示しているように思えてしまいます。

 

ただし、日本政府が掲げる内容は主にバイオ燃料をターゲットにしているのですが、実はそれだけではなく、ディーゼルやガス燃料も含まれています。

 

その点は、いいかな、と思いますが。

 

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カーボンリサイクル(4)(終わり)

bluetech.hatenablog.com