Blog 真っ青な空

企業を定年退職したエンジニア、科学技術コンサルタントやってます。

「国民の文明史」を読む(5)

中西輝政著 「国民の文明史」を読んでいます。

 

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中西は、その著書の中で日本文明が持つシステムは2つある、として以下を挙げて、実際に日本史を検証しています。
・「縄文的なるもの」と「弥生的なるもの」が交互に現れる、劇的な相互変換システム。
・外から流入する文化、技術、文明を日本にあうように変えてから受け入れる「換骨奪胎の超システム」

前回は江戸時代。今回は明治について記してみます。

明治はサクセスストーリーです。日清、日露の戦争勝利。そして欧米列強への仲間入りができた時代です。

それは、五箇条の御誓文(ごかじょうのごせいもん)を基本方針として進められてきた結果でした。

五箇条の御誓文明治元年3月14日[1](1868年4月6日)に明治天皇が天地神明に誓約する形式で、公卿や諸侯などに示した明治政府の基本方針

・広く会議を興し、万機公論に決すべし。
・上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし。
・官武一途庶民に至るまで、各々その志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す。
・旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし。
・智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし。

最後の方針は、日本は文明開化、欧化に向かうべき知識を世界に求めるが、その一方で皇室を中心とする日本の国家のあり方を振るい起こすべき、と言っており、単に知識、思想を導入するのではなく、日本の国家を忘れるな、という警鐘となっている。

そして「和魂洋才」でやってゆこうと考え(これがまさしく換骨奪胎システムの動作)、明治はうまくゆきました。

 

そして、その栄光が為されたあと、日本にはある種の空虚感が漂い、知識人たち、次のリーダーたちは、なにを自分たちはやればいいのか、わからなくなった。それが実は明治末期の日本の姿だったのだそうです。また海外では、社会主義が勃興し、ロシア革命への道をひたひたと歩んでいる時期でもあったのです。

 

「国民の文明史」を読む(5)(終わり)