Blog 真っ青な空

企業を定年退職したエンジニア、科学技術コンサルタントやってます。

ウクライナ戦争と脱炭素化

ウクライナ戦争が長引きそうで、そのさまざまな影響が取りざたされています。


政治的には、ヨーロッパの国々のウクライナへの支援や、一部はNATO加盟へ走ったりしています。また、ヨーロッパだけでなく中国や北朝鮮などの東アジアの安全保障。経済的には、西側諸国がロシアに対して行っている経済制裁、また、それに反発したロシアの対応などです。

 

ウクライナ戦争前から、世界では脱炭素化が標榜されていて、その流れに沿った施策や研究開発が行われてきました。

 

ウクライナ戦争」がこの「脱炭素化」にどう影響を与えるのか、少し考えてみます。

もっとも関連性が高いと考えられるのは、
ロシアが世界に供給しているエネルギーで、主に石炭、石油、天然ガスです。

特に天然ガスは、世界全体の40%をロシアが供給しており、パイプラインを通じてヨーロッパ諸国(ドイツ、イタリア、フランスなど)に輸出しています。

グラフ パイプラインガス輸出先シェア(前年同月比)/パイプラインガス輸出先シェアの推移(年別)

 

最近、これを、ロシアが停止する動きを見せました。
www.jiji.com

 

ポーランドブルガリアが、ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムから、ガス供給を4月27日に停止するとの通告を受けたそうです。

 

石油や石炭と比べて、天然ガス二酸化炭素負荷は小さく、その利用が期待されてきました。しかしながら、今回、その量に制限がかかることになりそうです。

 

この場合、もっとも大きな影響を受けそうなのがドイツです。以下の図は、ドイツのエネルギー源別発電量の推移を示したグラフです。

 

ドイツは、脱炭素の旗振り役であり、2022年末までには原子力発電が全廃され、同じ2022年末までに石炭および褐炭による発電を各15GWに削減。さらに2030年末までに石炭発電能力を8GWに、褐炭発電の発電能力を9GWに削減し、遅くとも2038年までに脱石炭発電を完了させる予定になっています。

しかし、天然ガスによる発電もあります。これは当然、ロシア産であり、停止されることを予想して早々に代替する必要があり、陸上風力・太陽光発電などの再生可能エネも、当然拡大を加速させることになるかと思います。

 

石油や石炭を削減し、そのつなぎとして二酸化炭素負荷の少ない天然ガスを使おう、という脱炭素化のシナリオも存在していたのですが、今回のウクライナ戦争で、その天然ガスすら利用できず、完全な脱炭素化、完全な再生可能エネへのシフトが急速に進むように思えます。

 

ウクライナ戦争と脱炭素化(終わり)